『夢喰い探偵』第3巻(最終巻)

『夢喰い探偵』第3巻

2016年10月17日に『夢喰い探偵』シリーズ最終巻となる第3巻が発売されました。

第3巻は第7話から最終話(第9話)までの3話収録となっており、設定上の謎が手つかずのままではありますが、宇都宮アイリ探偵譚のクライマックスとしてさわやかに締めくくられています。第3巻にはアイリと国谷のちょっと詳しいプロフィールなど、単行本派にうれしいおまけページがついています。

 以下は、第7話から最終話までの過去記事となります。

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シリーズを振り返って

『夢喰い探偵』は残念ながら第3巻をもってシリーズ完結となりました。本作ほど連載を続けてほしいと思った漫画作品は他にありません。書き手の投げたボールが違うことなくストライク、作中のすべての要素がただ一点を目指して集約するようにさえ感じられました。もちろん、この一点にいたのは私だけではないでしょう。

何度も繰り返していますが、本作の魅力はなにより「本格ミステリ」であること。一話完結というページ数の制約のもとで事件を展開しそして畳み込むまでの鮮やかさ。そこに至るまでの推理の過程はロジカルであり、ヒントが漏れなく提示される徹底ぶり。律儀な構成とフェアプレイにミステリ魂がくすぐられました。もちろん、キャラクターの魅力、画風、青春など、本作を構成する要素のどれもが欠くべからざるものでした。ミステリ好きに是非、ミステリ好きでなくても是非、読んでほしい漫画です。

これから本作を手に取る人へ

本作の各エピソードは完全に独立しており、どこから読んでも楽しめます。それまでのキャラクターを知っているからこそ味わえる面白さがあるのはもちろんですが。

さわやか系ミステリを気軽に味わいたいという方は第1巻(第1話~第3話)がおすすめ。第2話と第3話では、地に足の着いたミステリを披露しながらもヒューマンドラマとして味わい深く、青春ミステリの醍醐味がいかんなく発揮されています。

ミステリの出来栄えだけ知りたいという方は第2巻(第4話~第6話)がおすすめ。ヒントが正々堂々提示されたアリバイトリックの第5話は是非解きたい。不可解極まる事件現場が緻密な論理によって解体される第6話はシリーズ中の最高傑作。金田一耕助好きとエラリー・クイーン好きはとりあえず読んでみよう。このあたりのエピソードが好きなら、パズルを組み上げるような快感に浸れる第8話(第3巻)も楽しめるはず。

よく知らない作品を買うのは躊躇う、まずは様子見、というなら、マガジンRの公式ページで第1話(全ページ)が無料公開されています。犯人を追い詰める過程で一ひねり加えてあり、一般的なミステリ漫画のひとつ上を目指そうとしていることがわかります。(第1話→)夢喰い探偵-宇都宮アイリの帰還-|少年マガジンR|講談社コミックプラス

さいごに

『夢喰い探偵』の面白さに気づいたとき、ようやくミステリ漫画でいい作品に出合えたとうれしく思ったものでした。ミステリ漫画をあれこれ読み漁っているわけでもありませんが、「本格ミステリ」にこれほど合致する漫画作品はそう多くはないはずです。それだけにシリーズの終了は大きな喪失ですが、ミステリ漫画のお手本がここにあるという事実は変わりません。

 

『夢喰い探偵』、面白かったです。

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