三大流星群

三大流星群

宇宙空間に漂う塵は地球の大気と衝突すると発光し、地上からは流れ星として観察することができます。彗星が通過した後には大量の塵がまき散らされることになるので、地球とこの領域が一致する期間内にはいつも以上に多くの流れ星が発生します。これがいわゆる流星群です。

流星群は64種類もあり*1、実質的に毎日いずれかの流星群の活動時期に重なっていることになりますが、その中でも特に多くの流れ星を見ることができる流星群があり、三大流星群として知られています。1月のしぶんぎ座流星群、8月のペルセウス座流星群、12月のふたご座流星群です。

流星群はテレビの報道番組などで取り上げられることも多いのですが、大抵の報道では「いくつの流れ星が見れるのか」とか、「見ごろはいつか」といった出現ピークに関する情報しか提供しません。そのため、「流星群は出現ピークのときにしか見ることができない」という誤解を招きやすくなっています。実際にはピークの時間を過ぎても、あるいはその前後数日間に渡り多くの流星を見るチャンスがあります。では、具体的な流星の出現傾向はどういったものであるのでしょうか。以下では、有名な三大流星群に加えて、7月のみずがめ座デルタ南流星群*2の都合4種類の流星群の特徴を見ていきます。

流星の出現傾向

以下のグラフは、流星の数を日付ごとにプロットしたものです。横軸は日付(単位はday)となっていて、中央の0(day)がその流星群のピークの日です*3。縦軸はZHRという流星数の指標のひとつであり、ZHRが大きいほどたくさんの流星が流れることを意味します。グラフの元になっているデータは、アマチュア天文学者のコミュニティとして設立されたIMO(国際流星機構)*4が公開しているデータベースから、過去10年間(2007年~2016年)の観測データをすべて集計したものです。

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Meteor shower activity profile: (Upper left) Quadrantids. (Upper right) Southern delta-Aquariids. (Lower left) Perseids. (Lower right) Geminids.
Quad: しぶんぎ座流星群(図左上)

その年初めにやってくる流星群はしぶんぎ座流星群です(1月1日~5日)。しぶんぎ座流星群(左上)はまるで針のように急峻な活動傾向です。ピークの日を少しでも外してしまうと、もう流星はほとんど見えないでしょう。パッとピークが来てさっと過ぎ去ってゆく、なんとも潔い流星群ですね。

Per: ペルセウス座流星群(図左下)

ちょうど夏休みの時期と重なるためか、何かと話題になることも多いのがペルセウス座流星群です(7月17日~8月24日)。ペルセウス座流星群(左下)は比較的なだらかに変化している様子が見て取れます。ピークから2~3日ずらしても、十分な数の流星が発生しています。さらに、前後1週間程度までなら、それなりの数の流星を見ることができそうです。

Gem: ふたご座流星群(図右下)

クリスマス前にやってきて、その年を締めくくってくれそうなのがふたご座流星群(12月7日~12月17日)。ペルセウス座流星群ほどではないのですが、比較的活動期間が長く、ピークの一週間前から流星が増え始めます。面白いのは、ピークになる前は流星の数が緩やかに増えていく一方で、ピークが過ぎると急激にその数が減るといった、非対称な活動傾向を見せることでしょう。

Sounthern delta-Aqua: みずがめ座デルタ南流星群(図右上)

上述の三大流星群は最も流星が発生しやすい(そして、最も流星を見やすい)流星群ですが、他の流星群はどの程度の規模なのでしょうか。ここでは、みずがめ座デルタ南流星群を取り上げました(7月12日~8月23日)。三大流星群と比べてしまうと流星数としてはとても小規模のように思えますが、それらの流星群のピークを数日前後させたあたりの出現数とおおよそ同程度であることを考えれば、決して残念に思うような数ではないでしょう。むしろ、ピーク前後20日間も活動が続くので、非常に長い間楽しめる流星群であると言えます。

おわりに

流星の観察方法

流星群は多くの流れ星が見える日、ではなく、流れ星が見えるチャンスが高い日、という程度に理解しておくとよいでしょう。イラストや漫画にあるような流星の雨として見えるということはまずありえません。周囲に灯りのない、安全を確保できる場所に寝転んで、1時間ばかりぼけっと空を眺めつづける、といった気楽な態度で挑むのがベストです。

執筆動機

ちょっと気になって集計してみたらそれぞれの流星群の特徴がはっきり表れて非常に興味深く思ったので、集計作業がただの徒労で終わらないためにもここで紹介させていただきました。実を言えば、この程度の情報はネットのどこにでも散らばっているだろうと思い調べてみたのですが、ほとんど見つかりません。テレビの報道番組などに限らず、流星群を説明するならピーク日時や流星数だけでなく、こういった活動傾向も併せて紹介するべきでしょう。

リンク

流星群について重要かつ最低限の情報はこちらを見ていただくのが手っ取り早いのでおすすめしておきます。国立天文台のサイトなので、これ以上正確かつ利便性の高いサイトは望みようがありません。

www.nao.ac.jp

*1:流星群リスト(公式版)

*2:本ブログが絶賛オススメしているミステリ漫画『夢喰い探偵』の第4話に登場した流星群です。

*3:ピークの日は目算で決めました。

*4:IMO | International Meteor Organization