「閻魔沙羅からの挑戦状」推理ノート(2019年2月18日追記)

講談社メフィスト賞受賞作「閻魔堂沙羅の推理奇譚」シリーズから派生した企画として、公募型懸賞金付き推理小説「閻魔沙羅からの挑戦状」が公開されている。

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【問題編】【ヒント編】閻魔沙羅からの挑戦状 犯人を当てれば現金5万円!/著:木元哉多|一般小説作品詳細|NOVEL DAYS

問題編となる小説の前半だけが公開されており、犯人の指摘は読者に課されている。推理のプロセスまで明示した上で犯人を特定した読者には賞金まで出るということだから、これは見過ごせない。ここでいう「推理のプロセス」には推理ドラマ「安楽椅子探偵」シリーズで言うところの「エレガントな回答」が求められていることは言うまでもないでしょう。

解決編を含む本編(シリーズ第4作)の発売は今冬とのことですが、懸賞金の回答期限は2018年10月31日となっています。回答回数は無制限、9月5日には追加のヒントもあるということなので、今後しばらくはこの話題で盛り上がることができそうです。

 「名探偵予備軍」のみなさまのために、登場人物と、おおまかな出来事をまとめておきましょう。

登場人物

向井由芽

尼川中学2年2組。

堀之内亜美

同上。

栗竹七菜香

同上。

丸美麗奈

同上。美人。

徳永晃平

同上。イケメン。

江藤聖也

同上。ひきこもり。

江藤恒男

聖也の父。悪徳弁護士。暴力団と関係あり。有名人。

江藤未羽

聖也の母。元モデル。

駒野秀明

2年2組担任。数学担当。未羽と不倫。

向井鉄矢

由芽の父。売れない画家。

事件概要

日時

内容

水曜日

七菜香、駒野と未羽の不倫現場に遭遇、証拠写真を撮影。

翌、木曜日

七菜香、由芽と亜美に不倫の証拠写真を見せる。

亜美、七菜香から写真をもらう。

一週間後

亜美、誤答したはずの数学のテストが100点。
七菜香、クラスの投票により演劇のヒロイン役に当選。
由芽の父、絵が30万円で売れる。

翌日?

由芽、職員室で未羽に遭遇。

その後、下駄箱に鉄矢の万引き写真を発見。

4日後

由芽、徳永から手紙をもらい、夜の尼川神社に呼び出される。
何者かに脅迫を受ける。

その後、何者かに撲殺される。

 

推理ノート

  • 由芽にナイフを突きつけた脅迫者と、その後由芽を撲殺した殺害犯という異なる2名の人物が事件に関与している。
  • 尼川神社に由芽を呼び出したのは徳永なのだから、犯人(脅迫者あるいは殺害犯)は徳永なのか。
  • 由芽はなぜ脅迫されたのか。また、脅迫者はだれか。
  • 由芽はなぜ殺害されたのか。また、殺害犯はだれか。

その他、説明を要すること

  • 亜美はなぜ不倫の証拠写真を七菜香からもらったのか。
  • 亜美の数学のテストが100点だったのはなぜか。
  • 七菜香が演劇のヒロインに当選したは偶然か。
  • 由芽の父・鉄矢の絵が高値で売れたのはなぜか。購入した「高貴なご婦人」はだれか。
  • 由芽に気づいた未羽が由芽をにらみつけた理由はなにか。
  • 鉄矢の万引き現場を撮影したのはだれか。それを由芽の下駄箱に入れたのはだれか。そして、その理由はなにか。
  • 徳永が尼川神社に呼び出す手紙を書いた事情はなにか。本当に徳永が書いたものなのか。
  • 由芽はなぜ身に覚えのない脅迫を受けることになったか。また、なぜその直後に殺されなければならなかったのか。

monokuro'obakeの推理(2019年2月18日追記)

当キャンペーンは無事終了し、解決編を含む小説の完全版は『閻魔堂沙羅の推理奇譚 点と線の推理ゲーム (講談社タイガ)』として発売されています(2018年12月発売。電子あり)。残念ながら私の「推理」では当選には至りませんでしたが、読者を巻き込む推理ゲームの発展に大いに期待します。そのための人身御供として、キャンペーンサイトに投稿した私の「推理」を転載いたします。

由芽は何者かによって脅迫されたが、彼⼥にはその⼼当たりがないのだから、脅迫を受けるべき⼈物が別にいることになる。脅迫者の「⼩娘」発⾔に該当するのは七菜⾹、亜美、丸美の三名であるが、最近⽻振りのいい七菜⾹が疑わしい。彼⼥が不倫写真を材料に駒野と未⽻を強請っており、しかも⾃分の正体を隠しつつ友⼈にも恩恵があるような⾏動を取っていたと考えると、由芽の⾝近で起こった多くの出来事を説明できる。駒野と未⽻は要求された⾦額の⼤きい⼈物を強請りの当事者として認識するだろうから、由芽を脅迫する動機を持つことになる。ところで、脅迫者は由芽を呼び出すために徳永名義の⼿紙を利⽤した。これが容易に可能なのは未⽻ではなく、担任教師の駒野である。ゆえに、脅迫者は駒野である。⼀⽅、由芽を撲殺した犯⼈は凶器として⾃然⽯を⽤いた。事前に凶器が⽤意されていなかったことは犯⾏の⾮計画性を⽰すから、殺意は何らかの事情によってその場で⽣じたことになる。それに該当するのは駒野が由芽を脅迫したこと以外にないのだから、この出来事の意味を理解できる⼈物が犯⼈であり、本来脅迫を受けるべき⼈物でしかありえない。ゆえに、犯⼈は七菜⾹である。

もっと推理をしてみたいあなたへ

 東京創元社のミステリ専門誌『ミステリーズ!』にて、2号にわたって「問題編」「解決編」が掲載される犯人当て小説が継続中です。市川憂人さん(vol. 91-92)、米澤穂信さん(vol. 92-93)、東川篤哉さん(vol. 93-94)といった面々による渾身の力作が掲載されているので、ぜひ挑戦してみてください。vol. 91-92の市川憂人さんは激烈プッシュしている新人の書き手なのですが、本企画の作品が初の短編作品でもあり、要注目です。